ー3月8日国際女性デー・毎日新聞との共同調査ー
ママアスリートに聞いてみた!
妊娠・出産のタイミング、ライフプランニング、アスリートならではの課題、ママアスリートとは…

3月8日の国際女性デーに合わせて、MANの女性アスリートに対して毎日新聞と共に共同調査を実施しました。あまり実態の分かっていないトップレベルの女性アスリートの出産の実際や課題感等をお伝えいたします。
※本データおよび記事の内容の利用には許諾が必要です。ご利用の場合はお問合せフォームより事務局までご連絡下さい。

トップアスリートの出産年齢について

MAN所属の女性アスリート17名の皆さんに、第一子を出産した年齢を聞いてみました。一番早い選手で22歳、最も年齢が高い選手で34歳で出産をしています(図1)。20~24歳までに出産した選手は3名、25~29歳が7名、30~34歳も7名でした(図2)。例数が多くはありませんが、平均すると28.6歳でした。

出産した年齢についてどう思う?

上記の、第一子を出産した年齢についてどう感じているか聞いてみたところ、20代で出産した選手は皆さん「タイミングはちょうど良かった」と思っていること、30代で出産した選手「もう少し早い方が良かった」と思う選手3、「分からない」と思う選手が2名、「ちょうど良かった」と思った選手1名、逆に「もう少し遅い方が良かった」と思った選手が1名という結果でした。

妊娠・出産のタイミングで悩んだ経験は?

妊娠・出産のタイミングで悩んだ経験の有無を聞いてみました。20代前半に出産した選手は皆さん、「妊娠・出産のタイミングで悩んだ経験はない」とのことでした。20代後半や30代前半で出産した選手はそれぞれ5名の選手が「タイミングで悩んだことがある」と回答しています。
 
「タイミングで悩んだことがある」と回答した選手の悩みはどのような内容だったのかを、図5に示しました。「妊娠・出産による身体の変化で競技に影響する不安がある」と思った選手が8名、「競技生活と子育ての両立への不安」を挙げた選手が8名、「出産後の練習時間確保への不安」を挙げた選手4名、他、「無月経など健康上の問題」1名、「親になることに自信がない」ことを挙げた選手1名でした。
 一般の働く女性でも、キャリアアップのタイミングと、妊娠・出産のタイミングが重なって悩みを抱えることがよく聞かれますが、アスリートも同じような悩みを抱えることが多いことが分かりました。
 特にアスリートは身体が資本ですから、競技ができるレベルまで心身を再構築できるのかという不安
また自身の回復・再構築だけでなく、育児・家事を両立できるのかという不安が大きいことが分かりました。

 妊娠・出産のタイミングについては、以下のようなアスリートならではの意見や考え方がありました。
  • 次のオリンピックに向けて練習やトレーニングの時間が取れるタイミングを考えた
  • もっと若い時に出産したら身体の戻りが早かったかもしれないが、ある程度キャリアを積んだからこそチームに理解を得られたのかもしれない
  • チーム競技なので、自分とチームのベストタイミングが合致しないときがある

総じて、妊娠・出産のタイミングを考えているようなアスリートは、チームや日本代表の活動、オリンピック等の目標とする大会に間に合うかといったことを考慮していることが分かりました。


ママアスリートになった時に何が課題になるのか?

競技と育児の両立で苦労した点を教えてくださいという質問に対しての回答は以下の通りです(抜粋)。

  • 子どもをどこに預けるか問題。最近は試合会場に(観客用)託児所や授乳室が設けられるようになってきたが、選手やスタッフの子は預けられないことがある。
  • 金銭面。子どもを預ける環境
  • 経済的な支援で解決することもあるが、安心して競技に取り組むには、信頼できる預け先が必要だった
  • 海外遠征や合宿で離れる時に泣かれたこと
  • 子供も海外試合に一緒に行ける支援などあるとよい
  • 子供が病気の時に子供を預けて仕事に行かなくてはいけない時が1番辛い。
  • 海外遠征の際は義母(現役保育士)に預けられたのでなんとかなったが、遠征の度に毎回預けるのは厳しい。
  • どのジムもプールも子どもNGなので、子どもを預けてトレーニングするしか方法がなかった。
  • アスリートだけでなくママが気軽に運動できるようにプールやジムにも子どもを短時間預けられる場所があったら良い
  • 子育てにはイレギュラーな事が多く、競技強化の取り組みのように計画は立てづらいため、日常生活での心配や 不安が常にあった。両親が高齢でフルサポートを願うに難しく、信頼できる親族や友人、地域の保育ママサポートを活用。発熱し保育園に預けられない様な場合に備えた臨時サポート等の支援があると良い

子どもの預け先、つまり託児の問題が多く挙げられました。アスリートは遠征や合宿が多いので、実母・実家のサポートが不可欠という意見もありました。また、育児はイレギュラーな事(子が急に発熱等)が多いので、病児保育をはじめとした臨機応変な対応が可能な託児体制が求められることが分かりました。そして単に預けることができるだけではなく、子どもの成長を考えると、安心して信頼して託児できることが重要という意見がありました。

また、練習や遠征に子どもを帯同させられる雰囲気・風土子連れで利用できるジム・練習環境があるとよいという意見がありました。もちろん、競技種目によって可能かどうかもありますし、託児によってオンオフのスイッチが切り替わるという選手もいるので、一括りにはできませんが、育児と競技の両立が許容されるような雰囲気・風土が醸成されることは、ママだけ、選手だけでなく、パパや競技団体のスタッフ等も、ライフイベントと競技活動の両立がしやすくなると考えられます。

子を持つことがアスリート人生にどのような影響を与えましたか?

人生の宝物競技面でも強くなった産前より集中して競技に取り組めている、競技のモチベーションに繋がっている、人として鍛えられている周囲への感謝が増したといった思いと共に、育児と競技の両立は大変なので安易に他のアスリートには勧められない子どもを産んでまで自分の好きなことをやるなんてと非難の声を浴びたといった経験、家族の幸せと自分の人生と折り合いをつけながらどう人生設計をしたら良いのかといった悩み・葛藤も語ってくれました。

アンケートに回答してくれたアスリートの皆さんは、子を産むという人生を選択し、幸いにして子を持つことができ、育児と選手・育児と指導者を両立するという人生を選択しました。おおげさかもしれませんが、人生の終わりを迎えるその時に、大変なこともあったけど自分らしい人生を選択して生きてこれた、そんな風に思えたらいいなと思いませんか?選択は人それぞれですが、自分らしい人生を歩む、その一つの道として、育児と競技活動の両立という選択肢もあるんだよということをお伝えできればと思いますし、そのような選択をする方々をMANは心から応援します!


それでは、是非アスリート達の本音を是非感じ取って頂ければと思います。

  • 子供に自分の頑張る姿を見せたい!と単純にパワーが湧いてます。 

  • 競技を続けられたのも子供がいたから。子供なしでは私の競技生活は成り立っていなかった。子供にカッコイイ姿を見せたいという気持ちも出て頑張れた。 

  • 私の人生の宝物

  • 子どもを持つ事で、慈愛や奉仕の心が育まれ、それはコーチングや人間関係にも多大な影響を与えています。子育てをしながら選手を続ける事について、やれる環境があれば大いに挑戦すれば良いと思います。しかし、これは個人的な感覚かも知れませんが、やはり子どもには常に、特にある時期までは母を求めており母が必要で、いくら家事分担や金銭的なサポートや、男女の育児や家事に対するジェンダーバランスや意識、平等が実現しても、母にしかできない事(心理的なサポートや安心感)があると感じます。そこを自分の人生とどう折り合いのようなものをつけ、家族の幸せも考えながら人生設計していくのか、答えが出ないと思います。 

  • 子供が生まれてからの方が強くなったと思います。(競技面で) アスリートが子供を持つことはその競技をやる人たちの競技寿命も伸びますし、後輩たちにも子供が産まれてもやれるんだという選択肢を増やすことができると思います。 まだまだ少ないですが、子供を産んでも競技を続けることが当たり前になってくるといいなと思います。 

  • 産前より集中して競技に取り組めている気がする。競技は育児のストレス緩和に、育児は競技のストレス緩和になっているのでメンタルの浮き沈みが少なくなったと思う。子供達にスポーツを通して健康に成長するお手伝いをしたいという気持ちが増し、子供達の育成にも興味が出てきた。日常の小さな幸せや喜び、感謝に敏感になった。 

  • 今まで競技一本で心身ともに良くも悪くも周りが見えていなかったり、それが全てだと感じていたところがありましたが、出産後にはその考えはきれいになくなりました。産後復帰の自分自身が描く自分自身のゴールは「現役時代の自分」ではなく「新しい自分」とし、前なら落ち込んで引きずるようなことでも、出来たことや出来なかったことを明確化でき「明日はクリアできるように頑張ろう」と気持ちの切り替えがうまくできるようになった。それはやはり家族や子供の存在が大きく、「競技だけじゃない」と思える心強さからきたものだと感じました。 あとは、目標や夢を持つことの大切さに気がつきました。現役中は当たり前のことでしたが、出産してからは考えることすらなくなり子供(赤ちゃん)の時間軸で過ごしていたので、復帰した際には目標や夢を追いかける自分がとても誇らしく思えたことを覚えています。夢や目標を持つことの素晴らしさを、そこで理解できたのは自分にとって非常にプラスに働きました。 

  • 競技へのモチベーションが上がりました。自分のため、人のためにやるのに限界を感じていたころライフプランの転機が訪れたので、今は競技へ前向きに取り組んでいます。新しい目標ができた感じです。あとは関係者の方々が理解してくれているのがありがたいです。 

  • 人生がカラフルになりました。効率的な時間の使い方、その中で成果を出すロジック。また応急力、忍耐力も本当に鍛えられます。人として強くなる、成熟するという意味を子育てから教えて貰っている最中です。

  • 子どもを産んでまで自分の好きなことをやってどうするんだと非難の声を浴びました。私自身も子どもが産まれたら可愛くて可愛くてたまらなくて、自分の夢や目標なんてもうどうでも良いと思いました。でも、この子にとってずっと離れずに一緒にいることだけが本当にこの子のためなのか?と考えた時それは違うなと感じました。私らしい私でママでありたいと考え、競技復帰をしました。子どもが産まれて自分の命より大切な宝物ができたからこそ、限りある時間がさらに貴重になり、自分の夢、目標に向かってる私、ママとしての私、両立させることでとても濃い人生となりました。 

  • 子どもと競技を両立した経験を得させてもらえた事はとても大きな財産。思うようにならず葛藤した事、涙した事は少なくなかったですが、子どもがいてくれた事、サポートしてくれた人たちがいてくれた事で『私はこんなにも頑張る事ができる人間だったのだ』と。自分自身の再発見と再発掘に繋がり、成し遂げた事への自信は今も自分を強く前を向かせてくれる要素になっています。 まさに、不屈の精神を磨かれた。そんな想いです(笑) 現在は『世界の頂点を目指すスポーツ競技者』ではありませんが、今もアスリートであるマインドは変わらず、フェーズを変えて目標を持ちそのビジョンに向けて前進する中で『仕事と子育ての両立』の課題と向き合っていますが、自分らしい人生を過ごすイメージの中に子供がいるのであれば、是非『今』の状況変化を恐れずに『妊娠・出産』を推奨したい思いです。

  •  競技と子育ての両立は、正直なところ大変なことが多く、簡単に妊娠・出産をアスリートに勧める気持ちには至っておりませんが、私自身を成長させ、人生を豊かにしてくれるものであります

  • アスリートに限ったことではないと思うが、妊娠出産は本当に奇跡に近いことだと思うし、それを経験したからこそ、その後どんなことでも乗り越えられる気がする。子どもを育てるのは大変なことも多いが、それ以上に人生に幸せをもたらしてくれる存在。子どもがいることによって、今まで以上に競技に楽しんで取り組めていると思う。 

  • 人間としてアップデート出来る経験になっている。困った時に、助けてくれる人の温かさが身に沁みる。
 
  • 自分自身の世界観や、自分や他人に対しての許容できる範囲が広がったと感じています。また、トレーニングに対する集中度が高まったり、競技へのモチベーションにもなっています。「背中で語れる母になる」というのがモットーです。

 

MANでは、引き続き、先輩アスリートの経験や知見、ロールモデルとなる事例の発信をしていきます。